稲の作り方,田んぼの作業編

田んぼでの作業は3月からはじめています。3月に最初にやる作業は家に置けない苗箱を置くための苗床を作ります。

田んぼの水口から水が苗床に来るように溝を掘り、苗床に来た水が外に漏れないように畝を作ります。後日、種を撒いた苗箱を持ってきてトンネルハウスを作ります。

田んぼの畦の修復をします。福地の田んぼにはイノシシが出没します。稲刈りが終わった後、必ず田んぼに来て食事をするために畦を荒らします。その他、ヘビやモグラなどが地下に穴を開けて田んぼの水が漏れる状態になっていたりします。田んぼの畦からの水漏れをしないようにするために畦塗りをします。畦塗りは土を水で濡らして柔らかくしたものを左官さんが壁やコンクリートを塗るのと同じような感じでやります。

4月初めに元肥として米ぬかを散布します。散布量は作付けする品種によって肥料の窒素量を考えて決めます。私が作っているうるち米、ミルキークイーンという品種は病気に弱い品種なので1反当たり100kg、窒素分1反あたり2kgぐらいです。もち米、タカヤマモチの場合は病気に強いので多く散布します。品種による元肥窒素の違いは大まかに3つのタイプに分かれると思います。

①倒伏に強い、晩生、茎数が確保しにくい品種、早生でも穂数確保が収量にとって重要な品種

→元肥窒素は1反当たり6kg程度

②中間タイプ→元肥窒素は4~5kg

③倒伏に弱い、草丈が伸びる品種

→元肥窒素は2~3kg

 

このタイプに当てはめるとミルキークイーンが③、タカヤマモチは①になります。

ただ、稲を作付する土地の気候や土壌等によって品種による窒素量も変わりますので、自分の地域にあった元肥窒素量を見つければいいと思います。

米ぬかはお米屋で買っています。田んぼへの散布は機械を使わず、手作業で散布しています。

元肥を散布して1~2週間後に田起しをします。過去には不耕起での稲作りをした事もありますが、田植えに時間がかかったり、除草がうまく出来ない、収穫量が思うように増えないこともあり、近年は田起し、代かきをしてから田植えをするようにしています。田起しは耕運機でやっています。私の借りている田んぼは湿田なので、深く掘り過ぎないように注意して田起しをするように心がけています。

田んぼが湿田という事で、田起しをやらずに田起しをしていない状態で水を入れ、代かきをする事もあります。

田植えの1週間~5日前までに代かきをします。代かきをする目的は砕土と均平作業をする事により、漏水を防ぎ、耕土の状態と肥料の分布とを均一にし雑草の発生を抑える、などの効果があります。田んぼを始めた頃は地主さんにトラクターを借りて代かきをしていましたが、その後は田んぼの表面だけを鍬で田起しして、手押しの除草機で代かきしたり、小さい田んぼでは鍬で田起し、鍬と足を使って代かきをしたこともあります。

現在は耕運機を使用して代かきをしています。耕運機のタイヤの所をカゴ車輪に交換して代かきをしています。代かきは2回行うようにしています。1回目は大きな土塊を崩し、代かき前に生えてきたスズメノテッポウなどの雑草を埋め込むようにしてならします(荒代)。2回目は田植えの数日前にやや深水にして浅く土を練るようにドロドロにして均平にします(「本代」または「植え代」)。代かきを毎年やっていますが、年に1回の作業、なかなかきれいに均平に出来ないものです。そこで耕運機での代かき後にエブリ(グランドをならす時に使うようなアルミ製の均し棒)でデコボコになっている所を直し、田んぼの高低差のある所を直し、均平にします。

田植えは5月初めにやっています。写真は2010年に私が担当してやっている稲作り体験&観察会の田植えの様子です。この田んぼは半分は普通に代かき、半分は不耕起にして田植えをしました。代かきした所はすじ付け器で9寸(27cm)間隔の線を縦と横方向に引き、交わった所に苗を植えていきます。不耕起の所は昨年植えた所の株元に植えています。不耕起では指で穴を開けてから植えなくてはいけないので、指が痛くなる事もありました。苗を植える時のコツは深く植えすぎず、浅めに植えるようにする事です。深く植えると初期の分けつが休眠しやすいので、気をつけます。

写真は2006年の稲作り体験&観察会で、田植えの前に参加者にすじ付け器ですじを付けてもらっている所です。すじ付けは最初、畦の横に沿って紐を張り、すじ付け器の端を紐に合わせてすじを付け、その後は田んぼについた線の端をすじ付け器の端に合わせてすじを付けていきます。

2011年から歩行型田植機を使用して田植えもしています。田植機を使用して田植えをする場合、欠株を減らす為、苗作りの時に播種量を多めにして育てた苗を作って田植えをしています。歩行型田植機は2条植えで条間30cm、株間約15cmぐらいで植えていきます。1反の田んぼを手植えだと2日近くかかる田植えも、田植機を使うとゆっくりやって1時間30分もかからずにやれてしまいます。機械の力はすごいですね。

田植え後1週間の田んぼです。ここの田んぼはイノシシがよく来る所なので、電気牧柵をしてイノシシに入られないように対策をしています。この時点では電気は通していませんが、柵があるだけでこの時期は入られないものです。
ここにある田んぼ2枚は田植え1週間後に手押しの除草機を押した後、除草剤を散布しています。農薬の散布はこの時点で初めての散布になります。夏にいもち病が発生しなければ、農薬の散布はこの1回で済みます。

田植え後、欠株の補植をやり、1~2週間後から7月末の穂が出るまでの期間の毎週末、無農薬の田んぼでは除草の日々になります。宮崎安貞の『農業全書』の中の有名な語句に「上農は草を見ぬうちに、中うちして草をとる。中農は草が見えてからとる。下農は見えてもとらない」というのがあります。除草は田んぼに雑草が見えてないうちからはじめるのがこつということです。田んぼに雑草がないなと思い、1週間後に田んぼに来てみると雑草が急に増えているなんてことがあります。そうならないようにする為に早めの除草作業をしています。上の写真は2012年の稲作り体験&観察会で手押し除草機での除草体験をしてもらっている所です。私はこの除草機を毎週末押すようにしています。そして除草機で押しても完全には除草出来ず、草が出てきた所は手で除草をしています。

上の写真は2003年の稲作り体験&観察会で手取りでの除草体験をしてもらっている所です。この田んぼでは除草が遅れた為にコナギが大きくなってしまっています。こうなると手で除草すると、すぐいっぱいになり大変です。手取りした雑草は、畔に出すか田んぼに足で埋め込んでいます。除草をしていて厄介な雑草だと思うのはコナギ、イボクサです。コナギは早めに除草作業をはじめてなるべく大きく生長したものを残さないように心がけています。上の写真のように多く残ると、稲の生育が悪くなってしまいます。イボクサは地下茎があり、除草で取り残しがあると1週間後すぐに生長して大きくなります。特に気温が高い7月~8月は生長が早く、除草するとすぐ手にいっぱいになってしまいます。

田植え後1ヶ月、6月はじめのミルキークイーンです。田植えの頃は15cmぐらいの苗が25cm前後まで生長しています。

6月中旬のミルキークイーンです。40~45cmぐらいまで生長しています。

6月末のミルキークイーンです。60~65cmぐらいまで生長しています。毎週長さを測っていますが、1週間で10cm前後生長しているのがわかります。

7月初旬のミルキークイーンです。70~75cmぐらいまで生長しています。分けつも少しづつ増えてきています。この頃になると株元のサヤの中に穂の赤ちゃん(幼穂)が出てきます。サヤを剥いで白い幼穂を観察する事で出穂する日を予測することが出来ます。そして幼穂の様子を見て穂肥を追肥として散布する場合もあります。しかしミルキークイーンは病気に弱い品種なので散布はしていません。肥料を多く必要とする品種は追肥をしたほうがいい場合もあります。その判断は作付けする品種、稲の様子(葉の色が濃いか?薄いか?)、気候等を考えて決めればいいと思います。

サヤを剥がして現れたミルキークイーンの幼穂です。

7月中旬のミルキークイーンです。80~90cmぐらいまで生長しています。

7月末のミルキークイーンです。この頃になると止葉(最後に出る葉)が伸びてきて、はやいものは止葉の葉鞘の内側から押し開いて穂が出てきます。上の写真は穂が出はじめて、先端の所は花が咲いています。

稲の花の様子です。籾(穎花)が2つに割れて、白い雄しべが花粉をつけて飛び出しています。ひとつの花が咲いているのは約2時間といわれ、次々に咲いて雌しべに受粉(自家受粉)して籾はしっかりと閉じてしまいます。この時期に17℃以下の低温にあうと花粉管の伸長はほとんどおこなわれないため、花粉は受粉能力を失い、不稔籾が多くなります。

8月中旬のミルキークイーンです。田んぼ全体穂が出ていて垂れてきています。8月初めにはイノシシに入られないように電気牧柵を設置しています。

8月末のミルキークイーンです。穂がだいぶ実ってきて重くなり垂れて、黄金色になってきています。収穫まであと少しです。この頃には田んぼの水は既に落としています。

収穫直前のミルキークイーンです。葉の色も薄くなり、籾も中身が充実した黄金色になりました。

上の写真は2013年稲作り体験&観察会でバインダーでの刈り取り体験をしてもらっている所です。現在、耕作している田んぼのうち、大きな田んぼ2枚はコンバインで稲刈りをやってもらい、小さな田んぼ4枚はバインダーでの刈り取り、はざ掛けをし、ハーベスタで脱穀をしています。バインダーは1条刈りで、刈り取りをする前に手で田んぼの4隅と田んぼの外周をバインダーが動きやすいように手刈りをします。手植えの田んぼだと、縦と横両方向刈り取りしやすいですが、田植機で植えた田んぼだと、横方向は株間が揃っていない為に刈りにくいので、縦方向のみで刈り取りをやっていきます。

刈り取った稲ははざにかけて天日干しをしています。天日干しは1週間して、ハーべスタで脱穀をしています。作業の都合上、刈り取ってすぐにハーベスタで脱穀をすることもありますが、籾の水分が多いと途中で詰まる事があったりするので、脱穀をしやすくするには天日である程度干した方がいいでしょう。天日干しをすると水分がゆっくり抜けていき、茎葉の養分を最後の最後まで籾に送り込むので、お米が美味しくなると言われています。

上の写真は2010年稲作り体験&観察会でハーベスタでの脱穀体験をしてもらっている所です。ハーベスタで脱穀された籾は設置してあるハーべスタ、コンバイン袋に入り、袋にいっぱいになる前に交換しながら作業をしていきます。脱穀作業終了後、籾の入ったコンバイン袋をライスセンターに持ち込み、乾燥機に入れます。天日干しだけでは水分がすべての籾同じにはならないので、乾燥機に入れて水分を14%~15%未満にします。刈り取った時点での籾の水分は、ふつう21%~27%ぐらいです。籾を乾燥後、籾摺りをしてもらい、玄米の状態で受け取ります。乾燥機の都合上、無農薬米だけで乾燥、籾摺りをしてもらえない為、残念ながら混ぜています。しかし、籾から出来るコイン精米機がある所を見つけてからは、ハーべスタ袋1袋は残し、籾から精米をして無農薬米を味わっています。もち米は全て籾の状態で家に持って帰り、家の庭で1日天日干しをしてから籾の状態で保存をしています。

上の写真は足踏み脱穀機と来年の種籾用の稲の脱穀をしている所です。足踏み脱穀機は足踏み式ミシンを踏むのと同じ要領で足元の踏み板をグイグイこいでいくと、突起物のついた胴(ドラム)が勢いよく回り、そこに穂の部分を当てると籾が落ちます。ちなみにハーべスタやコンバインの中を見ると同じようなドラムが付いていて、足踏み脱穀機が進化したものがハーべスタ、バインダーとハーベスタが合体したものがコンバインということがわかります。脱穀した籾はゴミを取り除いて袋に入れて保存します。種籾用の籾は1反当たり4kgぐらい採っておきます。

収穫後の田んぼの作業は、はざ木の片付け、電気牧柵の片付け、ハーべスタで脱穀した稲の藁を押し切りで切って田んぼにまきます。ライスセンターから籾殻をもらってきて、田んぼに散布、米糠を収穫したお米の1割ぐらいを目安に田んぼに散布しています。コンバインで収穫した時に土が深く掘られた所があれば鍬で平らにします。

これで田んぼの作業は終了です。